外食のチェーンストアの話題に触れることが多いblogなので、いちおう言及してみる。最近外食チェーンでバイトが起こした不祥事についてだ。
実のところ、外食株を得意としていた私がそこから一切手を引いたのは、トレーサビリティーに関する風評リスクがあまりにも大きくなったからだった。具体的には中国産のほうれん草を使っていて残留農薬が問題になり、売上げがガタ落ちになったケースがあった。世間の受け止め方が非常にセンシティブであり、しかもどこに地雷があるのかわからない状態では手を出せないと判断したわけだ。ところが実際に起きたことは、トレーサビリティーリスクよりも、むしろマスコミ主導による、日付の偽装などの絶えまない騒動だったわけで、これは予想外のことだった。ともあれ外食株のパフォーマンスがいいはずもなく、触らないようにしたこと自体は結果オーライだったのだが。
そしてここのところ立て続けに発生したバイトによる不祥事。吉野家で超大盛りの豚丼を作り、その様子を厨房内で撮影、ネットにupしたというケースと、KFCで虫を油で揚げたとmixiに書き込み、騒ぎになったので実は嘘でしたと取り消したものの、店に悪いイメージがついてしまったというケースの2つだ。特に後者は、チョコレート業界のバレンタインデーに匹敵するほどのフライドチキン業界のかき入れ時であるクリスマスを目前にした出来事だから、まったく目も当てられない。KFCの衛生管理については以前書いたことがあるが、ここでは蒸し返さない。それはまた別の話である。ともかくKFCも三菱商事もガックリきているだろう。
はっきり言って、こういう馬鹿バイトから身を守る術を会社側は持っていない。とりあえず「教育を徹底します」と強調するしかないのだが、それでこういう出来事を根絶できるかといったら到底無理である。厨房内の行動については相互監視を強めるといった方策が考えられるが、吉野家のケースでは丼に盛る人間と撮影する人間が協力しているわけで、相互監視も機能しない。ネットへの書き込みについてはそれこそまったく対処のしようがなく、できることといったら損害賠償請求などの手段で一罰百戒を狙い、「こういうことをすると痛い目にあうよ」と馬鹿にでもわかるようにするのがせいぜいだろう。
情報発信のハードルが極端に下がってしまったわけだから、安い賃金で働かせる動機があり、その賃金に見合ったバイトの質にならざるをえない以上、ある程度は覚悟するしかない。予防に限界があるのだから、トラブルが起きてしまったら、速やかに対顧客と対バイトへの行動をとるという事後対応プランを事前に作っておくぐらいしかできることはないと思う。
外食企業の対応策、といった狭義の問題はここまで。むしろ私はmixiへの書き込みについて、なぜ話がここまで大きくなってしまったのかが気になっている。どうも受け止める側の反応が、これまでとは違っているように思えるからだ。「虫を揚げても死なず、圧力をかけたらようやく死んだ」などという、常識があれば信じられるはずのない書き込みを、書いてあるとおりに信じた人がたくさんいたことになる。これはいったいどういうことなのか。
話は少し変わる。ケータイ小説について、早い段階で誰かが「これは小説と思うからレベルが低いだのワンパターンだのと腹が立つので、現代の説話なんだと思えばいいのだ」と書いていた。なるほど。世の中には自分の知らない隠された世界があるのではないかと疑い、その一端を垣間見た気になって満足する時期がある。昔からいろいろな噂話があるが、今はハローバイバイの子供向け都市伝説と、実話というふれこみのケータイ小説がそのニーズを満たしているわけか、と納得した。形を変えて現れては消えるフォークロアの一形態なわけだ。納得して以来、ケータイ小説には一切興味を持っていない。
それにしても奇妙なのは、「実話です」と申告しさえすれば、読者がそのまま実話という前提を疑うことなく物語を受け入れるところだ。仮にも小説ならフィクションだって面白ければそれでいいわけで、なぜそんなに「ノンフィクションである」ということにこだわるのだろうか。2ちゃんねらー達の、二言目には「ソースを出せ」という、ネットの書き込みなどに騙されてなるものかという固い決意とは正反対の態度である。
mixiでの、実際にやったわけでもない悪さ自慢などは、昔からある種の馬鹿が常にやってきたことだ。今でもいい年のおっさんが飲み屋で「昔は俺もワルでさ」という話をして、まわりの人から「バレバレの嘘つくんじゃねーよハゲ」などと失笑されているが、それと同じである。何も珍しくない。しかし「虫を揚げても死なない」と書いてあるのを読んで、それをそのまま信じる膨大な数の人間がいるというのは、以前には考えられなかったことではないだろうか。
これを「ゆとりだから」「ケータイ脳だから」という決まり文句ですませていいものなのか、実のところよくわからない。単なる年齢の問題なのか、世間全体の傾向なのか、それともほかに理由があるのか。スピリチュアル系のうさん臭い番組だって、頭から信じこんで見ているいい年こいた人がたくさんいるのだから、年齢の問題ではない気もする。やはりよくわからない。
いずれにせよ、ツッコミ力(りょく)が高い人と、相手の申告をそのまま鵜呑みにする人と、かなりはっきり分かれているような気がする。ネットやケータイの出現によりこの傾向が際立ってきているのではないか、というのをとりあえずの仮説としておこう。
2007年12月07日
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