ライターの小島容(いるる)はルポやドキュメントを得意としていたが
初めてフィクションの依頼を受ける。
資料集めなどを順調にしていたものの、いざ机に向かうとまるで書けない。
毎日飲んではいたが締め切りのプレッシャーから一日にウィスキーを二本飲むようになり、起きている間は常に飲みつづける「連続飲酒」が始まってしまう。
食べ物も受け付けなくなり、牛乳すら飲めなくなる。
それでも酒だけは飲む、という状況で自ら病院に行き入院する事になるが・・・
奇妙な入院患者たちの生態、個性的な医者、そして亡き親友の妹でマネジャーでもある天童寺さやかとの関係。
医学的知識と共に飲酒に限らない「依存」全般についての考察。
これらのことが冷静かつサービス精神たっぷりに描かれている。
キャラクターも分かりやすく、ストーリーもシンプルで、しかし面白い。
読後感もとても良い。おすすめの作品だ。
エンディングを引用する。
さやかが、高いスツールの脚を思いっきり蹴った。おれはなんとか平衡を保とうとしたが、そのままゆっくりと後ろへ倒れ込んでいった。
もうすぐバーの後壁にゴンと頭をぶつけるにちがいない。昔、酔っ払ってよくやったように。
いまこの瞬間も、何百、何千という酔っ払いが、同じ事をやっているのだろう。今夜、紫煙にけむるすべてのバーで。
ミルクの杯を高くかかげて、地上へ倒れていきながら、おれは連中のために呟いた。
スコール
「乾 杯!」
作家の中島らもさんが死去
この作品のエンディングが中島らもの終わりを暗示していたのかな、と
ふと思った。
この作品の中に「久里浜式アルコール依存症スクリーニング・テスト」というのが出てくる。実際自分がどういう状態なのか判定する事ができ、こういうところもサービス精神旺盛なわけだが、
2点以上・・きわめて問題多い(重篤問題飲酒群)
2〜0点・・問題あり(問題飲酒群)
0〜-5点・・まあまあ正常(問題飲酒予備群)
-5点以下・・まったく正常(正常飲酒群)
というテストで小島(つまり多分中島らも)が12.5点である。
えーっひでーーー。
しんじらんなーい。
俺なんかなーたったの6.7点だー。わっはっはーー。
というわけでこの本から得られる教訓は
「飲んだ時は転ばないように気をつけろ」でしょうか。
最後は笑って送り出してあげたいと思います。
らもさんのために乾杯!(もう飲んでるけど)