NY証取、米ICEが買収発表 総額82億ドルで (日経)
米インターコンチネンタル取引所(ICE)は20日、ニューヨーク証券取引所(NYSE)を運営するNYSEユーロネクストを総額82億ドル(約6900億円)で買収すると発表した。両社の統合により現物株式からエネルギー先物など金融派生商品(デリバティブ)まで幅広く扱う大型取引所が誕生する。経緯を簡単に振り返ると、
買収は現金と株式交換で実施。現在のNYSEユーロネクスト株主は保有1株につき、33.12ドルの現金かICE株0.2581株、もしくは両者の組み合わせを受け取る選択肢がある。買収条件はNYSEユーロネクスト株の19日終値に約38%を上乗せした。
買収完了後の本社はアトランタとニューヨークに置き、歴史的建造物であるニューヨーク・ウォール街のニューヨーク証取ビルも維持する。
NYSEユーロネクストは主力の現物株式の売買が低迷。昨年、デリバティブに強いドイツ取引所への身売りをいったん決めたが、欧州委員会の否決で断念した経緯がある。
・11年、NYSEがドイツ証券取引所に身売りを検討
・そこにICEがナスダックOMXグループと共同でNYSEに敵対的買収を仕掛けるも、NYSEは拒否。買収断念。
・しかし12年2月、EU委員会から独占禁止法の観点から合併案を否決され、身売りに失敗。
ということになる。
ICEとナスダックが共同買収提案を行った時は約110億ドルの買収額だったのだが、今回は82億ドルで決着。NYSEは1年足らずで28億ドルも安い提案を受け入れることになった。国境を越えた統合が不可能ということになるとこういう価格になるのだろう。ともあれこの発表を受け、NYSEユーロネクスト株は時間外取引で32%上昇しているわけだし、株主もあまり文句を言っても始まるまい。
これによってICEはNYSEユーロネクストが保有するロンドンのLiffeを手に入れることになり、念願の債券先物への参入を果たすことになる。
2000年に設立された新興デリバティブ取引所ICEが200年を超す歴史を誇るニューヨーク証券取引所を飲み込んでしまうわけで、アメリカのダイナミズム健在の感を新たにする。
<関連>
2007年03月17日
ICEは2000年に店頭市場として設立されて以来、エネルギー取引の主要な電子市場として成長してきた。2001年にロンドンの国際石油取引所を買収、今年初めにはニューヨーク商品取引所を10億ドル以上で買収し、ココア、コーヒー、オレンジジュース、砂糖などの先物市場に進出している。
2007年7月10日
ICEトップのJeffrey Sprecherは、ICEが買収交渉に参入したことによりCBOTの株主はCMEの最初のオファーよりも30億ドル高い評価を得た、と負け惜しみを言いつつも、取引所という産業の未来の勝者は、最も大きいか最も古いかではなく、市場の変化に素早く順応し敏感に革新する能力で決まるだろう、と述べた。