各種記事によるとコーヒーのおかわりは05年頃に全店舗で行われるようになった。Wikipediaには09年にマクドナルド広報がメディアの質問に答えているとある。
日本マクドナルド 5.7.3 コーヒーのおかわり自由(Wikipedia)
2009年(平成21年)5月時点において、一部店舗(スーパーやショッピングセンター内のテナントの一部等)を除き、店舗内で飲食する場合はホットコーヒーはおかわりが自由[63][97]。この情報は公式サイトには記載されていないが、同社広報が見解を示しており[63]、一部店舗の店内には掲示している場合もある。このサービスは2012年4月19日をもって終了した。この注釈[63]のトレンドGyaOの記事というのは「マクドナルドはコーヒーお代わり自由 意外と知らないファストフード店の”暗黙のルール”」(09年5月7日)というもの。関係する部分を引用する。
――コーヒーのおかわりはできますか?このように広報が公式見解として発言していたのだが、今回の価格改定にともなう記者会見で日本マクドナルド社長原田泳幸氏は、「おかわり無料というサービスはなく、特定の店でほんの一部のお客の特別な要求に対応していたサービス」であるという見解を示したのだ。
はい、マクドナルドでは全店でコーヒーがおかわり自由となっております。ファミレスのように「おかわりいかがですか?」とお声掛けはしておりませんが、スタッフにお声をお掛けいただければ。
――砂糖やミルクなどは何個まで貰ってよいのでしょうか?
基本的には、ご要望の個数をお出ししています。しかしコーヒー1杯で砂糖20個も30個もとなると…「常識の範囲内で」といったところでしょうか。
――店内に滞在する時間に制限はありますか? たとえばコーヒー1杯の注文で、何時間滞在して良いものなのでしょうか?
特に「何時間以上居てはいけない」といった決まりはありません。空いている時間帯でしたら、何時間滞在していただいても構いませんよ。ただしピーク時や、あと空いている場合でも寝てしまっているお客様には、スタッフからお声を掛けさせていただくこともあります。
マクドナルド、コーヒーを値下げへ - "おかわり無料終了"についても言及"(マイナビニュース)
日本マクドナルドは20日、「プレミアムローストコーヒー」(ホット・Sサイズ)をこれまでの140円から100円に価格変更し、発売した。これにより、「¥100マック」のメニューに加わることとなる。また同日、プレミアムローストコーヒーのホットMサイズも、これまでの190円から150円になる。おかわりできて140円か、なしで100円かは単にマーケティングの問題で、どちらが正解ということはない。滞店時間の長さや顧客満足度によって、日本マクドナルドが自由に方針を決めればよいことだ。にもかかわらず、原田氏はなぜ全店舗で行なってきた施策を、「特定の店で」「ほんの一部のお客の特別な要求に対応していたサービス」などと言うのだろうか。これではルールに従って利用していたお客をあたかもゴネる客・クレーマー扱いし、迷惑をかけられていたと言っているようなものではないか。
20日に同社本社で行われた記者発表会では、日本マクドナルド代表取締役会長兼社長兼CEOの原田泳幸氏が、「Twitterなどでコーヒーのおかわり無料が廃止という話もあるようですが、もともとおかわり無料というサービスはありませんでした。特定の店でほんの一部のお客様の特別な要求に対応していたサービスです」とネット上での騒動に言及し、「ですので、おかわり無料廃止と今回の価格改定とは一切関係はありません」とコメントした。
今回のことで思い出されるのが、08年12月に新商品のクォーターパウンダー発売時にサクラを1000人雇い行列をでっちあげたことが発覚した時のマクドナルドの対応だ。
「新商品を並んで買って食べるだけ」の短期アルバイトが登場、時給は1000円(Gigazine)
2ちゃんねるのまとめサイトの中に、MBS毎日放送で流れたニュースにおける原田氏のコメントが残っている。
23日に大阪に上陸したマクドナルドの新商品「クォーターパウンダー」。開店前からの長蛇の列の中にお金で雇われたいわゆる「サクラ」が含まれていたことが、JNNの取材で明らかになりました。東京でもサクラを使って行列を作っていたことが発覚し、この4日後の読売新聞の記事には日本マクドナルドの見解が掲載されている。
巨大バーガー「クォーターパウンダー」。関西初上陸となった23日、大阪・ミナミの店の前には開店を待つ大勢の人。徹夜組も含めたおよそ2000人が、1キロにも渡る長蛇の列をつくりました。
「販売開始いたしましたが、さきほど耳にしましたが2千数百人の方が並んでいらっしゃると。
大成功だったなと思います」(日本マクドナルド 原田泳幸CEO、午前11時半すぎ)
しかし、この行列の中には、なんとお金で雇われた客、つまり「サクラ」が最大で1000人含まれていたことがJNNの取材でわかりました。人材派遣会社大手の「フルキャスト」が事前にアルバイトを雇い、並ばせていたのです。
募集広告には「並んで買って食べるだけの仕事」と魅力的な言葉が躍り、時給1000円に加えて、ご丁寧に商品の購入代金まで用意するとあります。
「ただ並ぶだけというよりは、商品のモニターの仕事だったんですよ。(Q.これは“サクラ”では ないのか?)モニターのお仕事ですので・・・」(フルキャスト広報)
マクドナルドはこの翌日、初日の来店者数が1万5000人に上り、売り上げも1002万円と 最高記録を更新したと、ホームページなどで派手派手しく自慢しました。しかし、「サクラ」に買わせた数も含まれたこの数字は、純粋な売り上げと言えるのでしょうか。
「景品表示法上は、売り上げ高が多いこと、あるいは来客数が多いことが誤解を招くような場合は、不当表示に該当するおそれがあると考えられます」(公正取引委員会 取引課長)
自作自演との批判も上がっている今回の騒動を、日本マクドナルドはJNNの取材に対して、「モニターの募集は依頼したが、意図的に盛り上げようとしたわけではない」と話しています。(一部略)
マクドナルドの新商品発売、「サクラ」動員は東京でも(読売)
日本マクドナルド(本社・東京都新宿区)が大阪市内の店舗で新商品を売り出した際、アルバイト1000人を動員し、「行き過ぎた演出」などと批判が出ていた問題で、東京都内での発売日にも、イベント会社が手配した「サクラ」に行列を作らせていたことが分かった。
日本マクドナルドのコミュニケーション部によると、渋谷区で11月1日、新商品「クォーターパウンダー」を販売する臨時店舗を開設した際、「盛り上がりを演出するため」、イベント会社が手配したスタッフを開店前に並ばせ、商品を購入させるなどしたという。動員人数は公表できないとしている。
客寄せのためのサクラとの批判について同部は「サクラの定義がないので何とも言えないが、消費者に誤解を与える手法は見直したい」としている。
謝罪するのかと思えばさにあらず、サクラを1000人雇って行列を作っておいて「サクラの定義がない」「誤解を与える手法」などと開き直るのだから恐れ入る。今回のコーヒーの件もそうだが、マクドナルドの公式見解は「頭を下げたら負け」と言わんばかりの対応をするという特徴がある。「ご了承ください」といった程度のことすら言わない。現場で働く人々に強いる「スマイル0円」との温度差がすごい。コーヒーおかわり廃止などという、単に経営上の選択で特に間違いとはいえないようなことにすら過剰に反応し、すぐにばれる嘘をつくのはいったいなぜなのだろうか?
原田氏はNCR→横川ヒューレット・パッカード→シュルンベルジェ→アップル→マクドナルドと外資系企業をわたり歩き、日本子会社の経営者にまでたどり着いた。なのに自分の施策の間違いを認めることはすなわち「現地管理者失格」の烙印を本社から捺されてしまうという危惧があるのかもしれない。いや、それは無根拠な強迫観念ではなく、実際に評価が下がるのだろう。長年かけて築き上げた"植民地における管理者"の地位を守るためには、米本社の経営ボードに対して「無理を言うワガママなお客をどうにか処理していた」という体裁を取る必要があったのかもしれない。
日本マクドナルドの業績は堅調で、米本社からの原田氏への評価は非常に高いようだ。それはご本人の優れた能力によるものだが、同時にマクドナルドの忠実なお客が原田氏の望むような「数字」を作っているからだということもまた事実である。だからこそ、米本社の経営陣に向かっていい顔をするために日本のお客を貶めるような嘘をつかない言い訳を考えていただきたい。それは極めて優秀なマーケティング専門家の原田氏ならば、造作もないことではないだろうか。