
モーレソースとは、メキシコ料理に使われているカカオの入ったスパイスかおるコクのあるソースです。コクと濃厚感のあるカカオをベースに、シナモン・クミン・唐辛子などのスパイスでアクセントを加え、トマトペーストの酸味で全体を引き締めました。すりゴマが食感のアクセントになっています。との商品説明。
チョコレートと言っても甘くないスパイシーな大人の味。今まで体験したことのない独特なソース。くせになる味です。
「またメキシカンに挑戦する無謀な外食企業が現れてしまった……」
うれしい気持ちと暗い予感が交錯する。横着をして以前書いたエントリから引用。
なにしろチェーンストアというのはアメリカが本場であるから、関係者は常にアメリカのトレンドに注目している。そしてアメリカのファストフードを日本に持ってくるとほとんど定着しているという経験がある。こうなると誰だって「アメリカであんなに人気のあるメキシカンフードなら日本でも必ずビッグビジネスになる」と思うのは当然だろう。実際、日本でもいろんな会社が頑張ったのだ。ロイヤルが経営するシズラーでタコスを扱ったこともあった。でも人気が出ない。セブンイレブンではもう20年程前からブリトーを売っている。でもやっぱり人気が出ない。いつもサンドイッチの近くで寂しそうにしているが、ほとんど意地になって売り続けている。
今でも外食関係者には「いつかアメリカみたいに日本でもメキシカンフードはモノになるはずだ」という信仰にも似た見通しを持つ人がいるのだが、そういう人は東ハトの暴君ハバネロがヒットすると喜んだりする。「日本のメキシカンフードの夜明けだ!」とばかりに。でもやっぱりタコスもブリトーもナチョスも一般に普及するには至らない。
私はメキシカンが好きなのだが、日本では全くのマイナー料理だ。タコスなんか簡単なものだし、わざわざメキシコ料理店に行かなくても気軽に食べられたらいいのにと思う。でもファストフードとしてのメキシカンが日本で普及することはもう諦めている。理由を考察しても結局のところわからないし、わかったところで大手企業がことごとく失敗している歴史を見れば「どうやら日本では少数の店が成り立つ程度の市場から伸びることはなく、メジャーになることはない」と結論づけざるをえない。文句言わずにおとなしくカルディでディップでも買ってきて自分ちで食えということなんだろう、と理解するに至った。サイゼリヤが事実上タコスのファストフード化を断念したことも、期待していただけに心が折れた大きな理由である。
この商品の発売を知った時も「どうせ売れないのに…」と遠い目をしていた。だが日本サブウェイの社長はサントリーが海外に展開するレストランの経営のため、メキシコやスペインに駐在経験があることを思い出した。そうか、ここにもまだメキシカンに可能性を見出す外食関係者がいたのだ。うれしいことである。及ばずながら加勢しましょうということで、行ってきた。
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いきなり文句を言うが、菜彩鶏というネーミングがよくない。慣れない物を注文させる時に「な…?さい…?あや…いいや…別のにしよう……」と思わせてはいけない。店頭にこの鶏肉に関する特徴が掲示してあるわけでもなく、要は客に発音させる必要がない。普通に「ハーブチキンのモーレソース」かなんかにしておけばいいのに(正しくはさいさいどり。肉のうんちくは結局不明)。それはともかくお味は中々けっこう。カカオソースのコクにチリの辛味が軽めに潜んでいる。スパイシーな風味があるがキツくはなく、苦味もない。カカオを甘いチョコレートとしてしか食べたことのない人でも違和感なく食べられるのではないか。
海外のファストフードはまずはファッションフード、つまり流行りものとして日本にやってきた。1971年7月、マクドナルドが銀座三越に開店し歩行者天国で歩きながら食べることが話題になった時からそれは始まった。新しいスタイル・大袈裟にいえば新しい文明との出会いが賛否両論を巻き起こし、それがムーブメントとなりある時代の象徴になっていった。
しかし日本マクドナルド社長藤田田(デンと発音してください)は市場拡大のため、たまにしか食べないファッションフードから日常食路線に舵を切る。盛り場から生活道路への出店、和風味の導入(テリヤキソース・竜田揚げを応用したチキンタツタ)・低価格化と相次ぐ施策により、マクドナルドは狙い通りに日本人の生活に溶けこむことに成功した。だが日常性の強調は、外食することにともなう小さな期待や浮立つ気持ちを消していく過程でもあった。その行き着く先が現在の殺伐としたマクドナルドの店内環境だと言っても、決して言いすぎではないだろう。
この「菜彩鶏のモーレソース」は、日本ではメキシカンが売れないというジンクスどおり、やっぱり売れないだろう。でも、チェーンストアには新たな味・スタイルに挑戦してほしい。マスコミと組んで珍奇な流行を作り、一儲けしたから3年で撤収するような自称起業家の店など文字通りの羊頭狗肉であり、そんなものはどうでもいい。全国津々浦々に新しい食の体験を提案することができるチェーンストアだからこそ、諦めないでほしいのだ。この商品が失敗しても、ほとぼりがさめた頃にまたメキシカンに再挑戦することを期待している。
<関連エントリ>サブウェイが世界最大の飲食店チェーンになったはいいが、日本では債務超過な件
「菜彩鶏」は岩手では名の通った美味しい鶏です。
今は関東におりますが、地元岩手の畜産学を学んだ者として、サブウェイの看板を見た時は歓喜の声を上げてしまいました。
カカオソースというのが田舎者には不安でして・・・
でもこちらを拝見し、挑戦してみよう!とおもいました。
地元に貢献すべく、トライします♪
ありがとうございます^^*
商品名に入れるほどプッシュしているのに、店頭で特に産地や特長を掲げるわけでもなく、もったいないなーと思いました。でも今回覚えましたから、菜彩鶏を忘れることはないでしょう。
あ、今書いたらgoogle日本語変換では「さいさいどり」では一発で出てきませんでした。商標を持ってる十文字チキンカンパニーの一層の健闘を期待します。
カカオソースといっても苦くはありませんから、ぜひ挑戦してみてください。