2006年09月09日

日本人が受け入れられないアメリカのファストフードとは(その2)

「日本人は2つの例外を除いて、アメリカのファストフードを受け入れ続けてきた」という前回の話の続きである。

アメリカほど普及しなかったといっても、ドーナツを一度も食べたことのない日本人はまずいないだろう。しかしもう1つの「アメリカでは大人気だが日本に定着しなかったもの」は食べたことのない日本人がたくさんいる。それはなにかというと、タコスである。

タコベル(HP)という巨大チェーンがある。Wikipediaにもあるが昔はペプシコの一部だった。1997年にスピンアウトし、現在はケンタッキーフライドチキンやピザハットなどと同じくヤム・ブランズ(HP)の傘下にある。沖縄のみに進出していてルートビアでおなじみのA&Wもここの傘下だ。資本関係はこのエントリーには関係ないですけどな。

日本に進出したこともあったのだが、ぜんぜんウケずに撤退してしまった。今でもバーガーキングの復活を願う人と同じぐらいにタコベルの再進出を願っている人もいるようだ。つまりほとんどいないという意味だが。

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なにしろチェーンストアというのはアメリカが本場であるから、関係者は常にアメリカのトレンドに注目している。そしてアメリカのファストフードを日本に持ってくるとほとんど定着しているという経験がある。こうなると誰だって「アメリカであんなに人気のあるメキシカンフードなら日本でも必ずビッグビジネスになる」と思うのは当然だろう。実際、日本でもいろんな会社が頑張ったのだ。ロイヤルが経営するシズラーでタコスを扱ったこともあった。でも人気が出ない。セブンイレブンではもう20年程前からブリトーを売っている。でもやっぱり人気が出ない。いつもサンドイッチの近くで寂しそうにしているが、ほとんど意地になって売り続けている。

今でも外食関係者には「いつかアメリカみたいに日本でもメキシカンフードはモノになるはずだ」という信仰にも似た見通しを持つ人がいるのだが、そういう人は東ハトの暴君ハバネロがヒットすると喜んだりする。「日本のメキシカンフードの夜明けだ!」とばかりに。でもやっぱりタコスもブリトーもナチョスも一般に普及するには至らない。

アメリカのファストフードならほとんど受け入れてきたにもかかわらず、なんでメキシカンフードだけはダメなのか。アメリカで普及したのは、隣国だし人の行き来も激しいのだからむしろ当然だろう。そして日本はドイツのハンバーグだろうがイタリアのピザだろうがアメリカ経由で定着したのだ。メキシコだけダメという論理的な理由が見あたらない。確かに不思議である。野菜を多用していてヘルシーなイメージで受け入れられる可能性は大いにあるはずなのに、そのポテンシャルが顧みられることがまるでないのだ。

で、考えてみた。アメリカのように「隣国」の「スパイシー」で「ヘルシー」な食べ物が日本で定着する可能性はないのかと。んん?既にあるではないか。この3条件を満たす食べ物が。そう、キムチである。「なるほど!もうこのポジションはキムチで押さえられているからサルサソースが入り込む余地がなかったんだNE!」と大発見をしたような気になったんだが。

しかしよく考えてみると、何もタコスのようにチヂミがファストフードとして受け入れられているわけではないし、仮説として弱い。いや、もしかしたらこれからチヂミやらトッポギの炒め物やらがファストフードとして人気が出るということなのだろうか?えー、それは、ねぇ。無い話でしょ。

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しかしここに日本外食業界の宿願を果たさんとするドンキホーテもといチャレンジャーが現れた。そう、今最も注目されるべきファストフード店、イートランである。サイゼリヤが十条と川口で検証実験を行なっているこの店は、ハンバーガー・タコス・ピザといったアメリカで人気のあるファストフードを高いレベルで製造し、しかも価格破壊を行なうということをコンセプトとしている。メニューを見ると既にピザはなくなっているようだ。オペレーションが乱れるからだろうか。これからもまだまだトライアンドエラーを繰り返すことだろう。そしてフォーマットが固まった暁には日本国内だけで10000店を目指して出店するのだという。

すかいらーく経営陣の手前勝手なMBOだのマーケットの細分化に合わせた多ブランド化だの、なんだか細かい話ばかりのしょぼくれた業界で、こんなに大風呂敷を広げてくれると実に気持ちがいい。いっそ爽やかな気さえしてくる。サイゼリヤの正垣社長を応援する気にもなろうというものではないか。


<追記>サイゼリヤが挑んだタコス事業化に関する残念なエントリ
      10年10月31日 サイゼリヤ、ファストフード業態開発を事実上断念
posted by kaoruww at 23:59| 東京 🌁| Comment(5) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。
以前アメリカに数ヶ月ですが滞在したことがあって、「タコタイム」というチェーン店で週に何度かは食事をしてました。
なので、(その1)の答はもしかしてタコスかなあ、とおぼろに思っていたのですが、
日本でタコスと言うのはそんなにも受け容れられていないんですか。

ハンバーガー・ピザ・タコスと並べたら、ピザよりはタコスの方が日本人ウケしそうですよね。
トルティーヤの中には何を包んでもいいので、日本人の創作意欲を刺激しそう。
タコタイムにも豆や野菜だけを包んだメニューがいくつかありましたが、ピザやバーガーよりヘルシー感があります。

宣伝次第で、うまいこと火が付けば、日本にもすぐ定着しそうな気がします。
Posted by sheng at 2006年09月10日 20:07
はじめまして。「タコタイム」という店は初めて聞きました。本家のHPを見てみたら日本にも進出しているとありびっくり。日本の微妙なHPも発見しました。それを見ると日本には4店舗あるそうです。二子玉川はまぁわかるんですが、荒川区南千住と豊島区東長崎と千葉の蘇我という立地は、あまりにシブ過ぎて意図がさっぱりわかりません。とても興味深いです。面白い情報ありがとうございました。

タコスはきっかけさえあれば普及するに違いないと私も思っているんですけど、どうやらそれが罠らしいんですね。上記に出てきた大企業だけでなく、いろんなところがことごとく討ち死にしています。人気が出る要素は十分あるはずなんですが。まさに謎です。
Posted by kaoru at 2006年09月10日 22:40
微妙なHP見てみました。オレゴン州ユージンが本拠でした。
モロ自分の滞在したところでした… それで街中に店舗があったわけです。
すみません、全米チェーンではなかったかも知れません。

>シズラーでタコスを扱ったこともあった
シズラーだと、やっぱりセルフ式(トルティーヤの中に好きな具を好きな分量巻く)だったんでしょうか?
ファストフード型なら具がすでに入った形で出てくると思うんですけど、
お好み焼きも店によって提供の仕方が違うみたいに、そこで好みが分かれそうな気がします。
Posted by sheng at 2006年09月11日 21:11
>シズラーだと、やっぱりセルフ式(トルティーヤの中に好きな具を好きな分量巻く)だったんでしょうか?

そうです。サラダバーでトルティーヤに好みの具を入れて巻く方式でした。でも最後にシズラーに行ったのはもう3年ぐらい前のことですが、その時にはもう無かったはずです。キビシーですね。「自分で巻く」ということに注目すれば、これは太平洋をはさんで「西は手巻き寿司」「東はトルティーヤ」ということなのか?と新たな仮説が。こんなことを考えていると久しぶりにメキシカンフードを食べたくなってきました。

池袋には時々行くことがあるので、なんとか時間を作って十条のイートランには近いうちに行くつもりだったんですが、ついでに南千住にも行ってみたくなりました。無理ならセブンイレブンのブリトーで我慢するつもりです・・
Posted by kaoru at 2006年09月11日 23:50
六本木の水槽の脇のスペースならどうですか?
Posted by 田中大介 at 2014年08月08日 14:03
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