2011年09月09日

東京都がとしまえんを買収し、防災公園化の意向を示す

「としまえん」が都立公園に 10年以内に着手へ 西武ホールディングスは「売却する予定ない」(産経)
 東京都は9日、西武グループが運営する遊園地「としまえん」(練馬区)の敷地など約22ヘクタールを買収し、防災機能を持った都立公園として整備する方針を明らかにした。16日公表の「都市計画公園・緑地の整備方針」の改定案に盛り込む。10年以内の事業認可を目指し、西武側とも交渉を進めていくという。

 都建設局は「交渉次第だが、遊園地が存在したままの公園化は困難」としており、都立公園化には遊園地の閉園が前提となる見通しを示した。買収費用は算定していないとしている。

 都によると、「としまえん」の敷地は、昭和32年段階で「練馬城址公園」として、都市計画決定されていたが、事業化には着手していなかった。これまでに都が都市計画決定したケースで未着手のものがなくなったことから、「としまえん」の公園化に乗り出すことになった。10年以内に国土交通相の事業認可を得て、事業化を進める考え。

 「としまえん」はすでに災害時の避難場所にも指定されているが、都は「都立公園になれば、永続的な避難場所として管理できる」と説明している。

 西武グループの持ち株会社西武ホールディングスによると、「都から詳細な内容は何も聞いておらず、現状でとしまえんを売却する予定はない。今までと変わらずも営業を続ける」とコメントしている。

すでに堤家の手を離れた西武鉄道だが、西武と東京都には土地をめぐって因縁がある。04年10月に目黒区の国立科学博物館付属自然教育園に行った時に書いたエントリから引用する。
庭園美術館と自然教育園は放っておいたら今ごろは白金台プリンスホテルになっていた所である。

猪瀬直樹の「ミカドの肖像」に詳しいが、近頃表舞台から消える事になった堤義明の父、康次郎が終戦直後のドサクサにまぎれて財産税で苦しむ皇族に近づき、実務を取り仕切る執事に将来の保障をする事と引き換えに二束三文で手に入れた土地だ。しかし住民運動によりホテル建設を防ぎ、昭和57年3月に都が138億円で買い上げた。
当時税金の無駄遣いとの批判も強かったのだが、それはやはり正しい判断だったのだと思う。
結局得したのは都民の税金を合法的に手に入れた西武なのだが。

旧皇族朝香宮家が1947年に皇籍離脱するまで過ごした朝香宮邸は、吉田茂が外務大臣公邸として利用したあと1950年に西武鉄道に払い下げられた。

旧李王家邸を赤坂プリンスホテルに、旧竹田宮邸を高輪プリンス、旧北白川宮邸を新高輪プリンスにと、手に入れた旧皇族の土地に次々とホテルを建て、皇族ブランドを「プリンス」の名称と菊の御紋をデザイン化したロゴマークで商業利用してきた西武鉄道。手に入れた朝香宮邸に茂る雑木林を潰してホテルを建設する計画を発表すると激しい反対運動が起き、結局都が買い上げたという経緯がある。

今回ふって湧いたようなとしまえんの公園化計画。東京近郊の遊園地は少子化のあおりを受け02年向ヶ丘遊園、09年多摩テックと閉園が続いている。としまえんも入場者数が減り、累積損失解消のために関連企業の再編をしたりと苦しい状況にある。売却金額は数百億円にのぼるとみられており、西武鉄道に投融資している企業・銀行にとってはありがたい話だろう。

ただこれだけの規模の話だと、たとえ震災後の「防災エリア拡充」という錦の御旗があったとしても十分な精査が必要なのは当然だ。なにしろとしまえんは現時点でも災害時の避難場所に指定されている上、北には光が丘公園・東に都立城北中央公園・西に石神井公園がある。

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記事にある「昭和32年段階で「練馬城址公園」として、都市計画決定されていたが、事業化には着手していなかった。これまでに都が都市計画決定したケースで未着手のものがなくなったことから、「としまえん」の公園化に乗り出すことになった」という理由もどうなのか。54年前の計画策定後に巨大団地・光が丘団地が整備され、見ての通りとしまえんの敷地よりも広大な光が丘公園ができたにもかかわらず、そのすぐそばにさらに都立公園が必要かという疑問はあるだろう。「永続的な避難場所として管理できる」ことを理由に数百億を費やすことが妥当かという議論は必要だし、より費用対効果の高い防災計画はないのか模索する必要もある。

いずれにせよまだ交渉が始まっていない段階だ。注目しておきたい。


<補遺>
・07年4月1日、プリンスホテルは堤時代の皇室ブランドを利用してきた過去と決別するかのようにロゴマークを変えた。
プリンスホテル 新ロゴマークを発表

・旧朝香宮邸の東京都庭園美術館はリニューアル工事のため11月1日より約2年間休館となる。そこで10月6日から30日まで、朝香宮邸の建物に焦点を絞った展覧会「アール・デコの館」を開催する。ふだん公開される機会の少ない部屋も観ることができるようだ。
東京都庭園美術館建物公開「アール・デコの館」
posted by kaoruww at 23:59| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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