サンドイッチ店チェーン経営の米サブウェイは店舗数でついに、ファストフード大手の米マクドナルドを追い越し世界最大の飲食店チェーンとなった。
サブウェイの世界店舗数は昨年末時点で3万3749店、マクドナルドは3万2737店だった。マクドナルドが2月末に米証券取引委員会(SEC)に提出した届出で正式に明らかになった。
ファストフード業界は米国ではほぼ飽和状態で、世界展開が競争の勝敗を分ける重要な決め手となっている。サブウェイは1984年にバーレーンに海外一号店を出店。2020年までには海外店舗数が米国内店舗数を上回る見通しだという。同社の米国内店舗数は現在、2万4000店。ただ、売上高では引き続きマクドナルドが首位を維持している。
「あれ、サブウェイって元々マクドナルドより多くなかったっけ?」と思ったが、それはアメリカ国内での話で、全世界の店舗数で抜いたのは昨年末だというのがこのニュース。アメリカでマクドナルドを抜いたのはいつだったか調べてみたら、04年初頭のことだった。この時点ではまだ世界店舗数でマクドナルド約30000店、サブウェイ16000店と大きく引き離されていたのだが、丸7年で倍以上の33749店にしている。この規模のチェーン店が店舗数を年率10%以上増やし続けているのだからすごい。すごいが、以前「フランチャイジーが接近して店を出しすぎて共倒れになって訴訟」なんてことが続発していたわけで、また問題の種を播いているような気もする。
店を出しすぎて問題になるのはアメリカでの話で、日本はまるで状況が違う。サントリーがマスターフランチャイジー契約を結び、100%子会社の日本サブウェイが92年からフランチャイズ展開を開始。アメリカの大チェーンが有名企業サントリーと組んで日本上陸!と鳴り物入りで急速に加盟店を増やした。96年に早くも150店を展開したまではよかったが、そこをピークに縮小に転じる。日本サブウェイが設定したモデル店舗ですら赤字が出てしまうのだから、各店舗のオーナーだって続けてはいられない。99年には経営計画との大幅な乖離を理由に訴訟を起こされた。その後フランチャイザーの離反、新規加盟店の募集停止と事態は悪化を続け、03年にはついに店舗数が100の大台を割り、93店舗にまで減った。
幸いだったのは03年に就任した現社長が優秀な人で、それまでほとんど経営らしきものがなく漂流状態だったサブウェイがまともに動き出したことだ。小規模店舗への転換や新規立地パターンの開発により、1店舗当たりの売り上げは縮小したものの徐々に店舗数は増え、現在は96年のレベルを超えて239店と過去最多となった。初期投資額は小さくても毎月のロイヤリティは高いという、オーナーサイドには厳しい条件のチェーンなのだが、ここ数年は順調に拡大している。野菜を強調したヘルシーなイメージで女性客の取り込みをはかり、既存店売上高も2010年は前年比109.4%とたいへん好調。しかし残念ながら過去の負の遺産は重く、いまだ債務超過のままである。
ファストフード業界はアメリカ企業に席巻されているようなイメージがあるが、実際はそれほどでもない。日本で約3700店もあるマクドナルドの印象が強いからだろうか。アメリカではものすごい田舎にまであるサブウェイも日本では前述のとおりだし、全世界に6000店を展開し2020年までに15000店にしようというダンキンドーナツは、98年に撤退してそれっきりである。アメリカの食文化がたくさん流入しているのは事実だが、和のファストフードは健闘しており、牛丼や寿司がパンに追いやられることは今後もないだろう(回転寿司は江戸時代のファストフードへの先祖返りそのものだ)。
思想信条など一朝にして変わり、コロッと転向する者など珍しくもないが、食べ物の好みはそうは変わらない。子どもの頃に慣れ親しんだ味からは大人になっても離れられないものだ。人間の考え方や感覚の中で、最も保守的なのが味覚ではなかろうか。
<関連エントリ>日本人が受け入れられないアメリカのファストフードとは(その1)