2010年12月17日

FX税制一本化のニュースに寄せて

店頭FXに20%の申告分離課税適用、証券優遇税制は2年延長 - 税制改正大綱(マイコミジャーナル)
政府は16日、2011年度税制改正大綱を閣議決定した。これによると、現在、総合課税としている店頭FX取引に係る所得について、「くりっく365」など取引所FX取引に係る所得と同様に、20%の申告分離課税とした上で、両者の通算及び損失額の3年間の繰越控除を可能とするとしている。

というわけで2012年1月から、商品・FX・CFDが損益通算・損失の繰越ができるようになる。商品市場は事実上死んだも同然なのでどうでもいいが、FXは現在大きなバクチ場になっているので大きなニュースだろう。特に重要なのはこれまで「取引所で取引すると20%の分離課税だが、店頭取引だと雑所得になり総合課税になる」という不可解な2本立ての税率が、20%で統一されるようになることだ。

FXの利益を含む課税所得が195万円までなら15%、330万円までなら取引所取引と同じ20%だが、これを超えると30・33・43と所得に応じて税率は高くなり、1800万円を超えると最高税率50%を取られるという過酷なものである。これがどちらで取引しても20%に一本化されるというニュースは、レバレッジ規制により賭場に来るお客が減ってしまったFX業界にとって、神風が吹いたようなものだろう。

気になるのは、これまで税率は低いわ損益通算はできるわで制度的に大きなアドバンテージを持っていた取引所取引(くりっく365・大証FX)がどうなるかだ。大証は09年7月からの開始で日も浅いし、日経225先物という人気商品があるからダメージも少なかろう。だが、くりっく365をやっている東京金融取引所(TFX)はどうするのか。05年7月にスタートし、大証FXが参入するまで丸4年にわたって「税率20%・損益通算可能・損失を3年間繰越可能な唯一の市場」という異常なまでの優遇をされていた理由について、以前触れたことがある。

FX取引に関する二重税制の理由

「10年に1人の大物次官」についてのお話だが、その冷遇されていた「大物次官」が民主党政権樹立・小沢一郎復権により、09年10月TFX社長から日本郵政社長に転じたとたん税制一本化の話が動き出し、あっさり実現である。もはやTFXは用済みか。わかりやすい。

取引所HPを見ても特に大型商品も無く、11月22日から始めた株式CFDもパッとせず、くりっく365の競争力がなくなる今後の先行きは暗い。総合取引所構想が進む中で東京工業品取引所と適当に合併させられて終了なのではないかと思わせるに十分だ。グローバル化が進行する中、アジアでは中国で取引量急増、シンガポールで新取引所設立と、価格決定権を巡って激しい競争が繰り広げられている。しかるに日本は誰がどうしたの、商品取引所が解散だの、戦略性のかけらもない。競争に負ける以前に競争に参加すらしていないのだ。

税率の一本化や損益通算が実現したのだから大いに歓迎すべきニュースであるはずなのに、FX業者と違って諸手を上げて喜んだりできないのは、こういう理由である。
posted by kaoruww at 23:36| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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