2009年10月07日

総裁にトマトをぶつけないでください

夏の気配もとうに消え、季節はすっかり秋です。ちょっと肌寒いほどですが、皆さまいかがおすごしでしょうかとガラにもなく時候の挨拶から始めたのは、松屋のフレッシュトマトカレーが夏限定でないことに今さらながら気づいたからである。

前回のデフレ局面をはるかに上回るスピードと深さで物価が下落しているが、一切の規制が無いため非常にビビッドに市場動向が反映される外食産業では、底の見えない低価格競争が始まって久しい。一例として春以降の松屋の価格政策とその結果を見てみよう。

5月の既存店客数比が94.7%と不調であり、客単価は維持できているものの売上高が前年比95.9%と大きく減ったことを受け、290円というデフレ対応メニューの投入を決断したと見られる。つまり客単価を落としてでも客数を回復させ、売上げを確保しようというわけだ。その戦略商品であるトマトカレーの発売開始は6月25日だった。

トマトカレー効果が全面に現れた7月は、客単価は95.4%と下落。客数は100.6%と前年を上回った。しかし売上高は96.0%で、5月とほぼ同じである。

松屋月次

結局上期の既存店売上高は96.6%、全店売上高が100.3%ということで、新店オープン効果によりどうにか前年の売上げを維持している格好だ。

では肝心の利益はどうか。最新(7月31日付)の平成22年度3月期 第1四半期決算短信(PDF注意)には6月30日までの数字しか出ていない。デフレ対応モードに切り替える前の時期の数字である。売上高0.4%増、通常の営業活動による利益を表す経常利益は2.7%増と、ほぼ横ばいである。しかし残り9ヶ月を足した平成22年3月末までの1年間の業績予想になると、売上高2.4%増に対し経常利益5.6%減としている。通常、客単価が落ちれば客一人当たりの利益も減るので、客数が大幅に増えないと利益高は維持できない。売上高が横ばい程度では減益になってしまうわけだ。

トマトカレー投入の適否については見方が分かれるだろう。6月までの価格政策のままだったほうが利益は確保できていたのではないかという意見もあるだろうし、逆にデフレの深化が予想されるのだから一足早く対応して、価格面でのリーダーシップを取ったほうが顧客を繋ぎとめる効果があったという見方もできる。

いずれにせよ、デフレによる低価格競争には遅かれ早かれ参加せざるをえない業態なのだし、この局面で利益を増やすのは至難の業である。むしろよく5%程度の減益でとどめられると、前向きに評価した方がいいのかもしれない。


ともあれデフレは経済活動における死に至る病である。久々に復活した暗黒卿こと高橋洋一氏は新刊で、このまま需給ギャップを放置したままデフレが続けば、物価も収入も3分の2から半分まで落ちるなどと恐ろしいことを言っている。日本国民総体としては成長戦略よりも政権交代を優先したことになるが(もっとも自民党にも成長戦略らしきものはなかったのだが)、このまま次の総選挙まで4年、いやな偶然だが白川日銀総裁の任期切れまで4年の2013年までデフレスパイラルが続くことは、残念ながらほぼ確実だろう。財政が身動き取れないのだから、せめて実質金利を下げるような施策を打ってもらいたい。しかし白川総裁の生みの親である民主党政権にそれを望むのは、ないものねだりが過ぎるだろうか……?
posted by kaoruww at 23:22| 東京 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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