5月に入り、3月分のCPIが発表された。ふたたび日本はデフレスパイラルに突入することになるのだが、今回は以前よりも長く、深いものになるのだろう。次に水面に顔を出す日がいつになるのか、よくわからない。3年で済んだら御の字だなあとは思う。CPIのグラフを見ていると、映画の拷問シーンを連想する。風呂場かなにかにむりやり顔を沈められ、しばらくしてようやく息ができるようになり1年半ゼエゼエ言ってたら、また沈められた。しかも今度は息が荒れている状態の上に、さっきよりも長く沈められるのだという。
でも日銀はインフレが心配だから金融緩和はしたくないのだそうだ。一般国民にまったく無意味かつ余計な苦しみを与えても、さほど批判の声は大きくなっていないように見える。この国では経済ジャーナリズムというのはほぼ機能していないということなのだろう。
やむを得ず自己防衛に走り、縮み志向になる国民を責めるわけにはいかないはず。中央銀行がデフレを煽っているのだから、価値が増している現金をなるべく使わないようにするのはごく自然な行動だからだ。えらいもので経済理論など知らない老人も専業主婦も、本能的にそうする。こんな状態でさほど金回りがいいわけでもないのに消費に走るのは、よほど刹那的か、もしくは緩慢な自殺志向でも持っている人だけではなかろうか。
金融のクラッシュが実体経済に現れるのに2年かかるとされる。今度の秋で2年。経済の収縮が進行し、現実に苦しみを感じるのはまだこれからということになる。「今回の恐慌は極東で戦争が起きなければ十分」といったことを以前書いたが、そこらへんまで悪いことを想定しておけば、そうならなかったら(ひどく苦しくても)ラッキー、と思えていいのでは、というのが私の考えである。
経済が収縮してる真っ最中だというのに、NYに引きずられて東京も株が上がっている。「FRBの金融緩和が効いている。不況下の株高はよくあること」と評論家はもっともらしいが、また多くの者を苦しめずにはおかないだろう。デフレの時はキャッシュが王様。よほどのトレードジャンキー以外は、あと何年かは現金のままが正解だ。
連休が始まるというのに、なにかものすごく暗いことを書いているが……休み中に、またなにか書けるだろう。