2009年03月18日

もうユニクラーは名乗れない

ユニクロがジル・サンダー氏とコンサルティング契約 今秋から世界で展開(AFP)

ジル・サンダーにチューされる柳井氏の表情がなんとも得も言われぬ感じがするのはともかく、昨日の会見内容で驚いたのは、これがちょっとしたコラボではなくユニクロ全体のクリエイティブ監修とサンダー本人のオリジナルラインを展開するという本格的な契約だったことだ。ビッグネームを起用した話題作りといった低レベルの話でなく、ジル・サンダーの特徴である「ソフィスティケイト」とユニクロの標榜する「高品質ベーシックカジュアル」の方向性が重なっているところに説得力があり、「うまいブランディングだなあ」と感嘆した次第。

しかし悲惨なのは、すでに本人が辞めていた「ジル・サンダー」を去年9月に買収したオンワードである。まさにこれから大規模展開しようとしていた矢先に、御本尊をユニクロに獲られてしまった。しかもユーロ高の時に買っている。

オンワード、「ジル・サンダー」を264億円で買収(AFP)

オンワード樫山といえば、日本アパレル業界の雄だった時期もあるのだが……現在のアパレルの中心がどこにあるのか、残酷なまでにハッキリさせてしまったニュースであった。


かと思えばこんなニュースもあった。

眞鍋かをりもビックリ! - ファーストリテイリングが990円ジーンズを発売(マイコミジャーナル)

ファーストリテイリングの低価格ブランドであるジーユーに力を入れるのだという。ブランドキャラクターは眞鍋かをり。安いブランドに合わせたチョイスだ。これぞまさにブランディングの妙と言えよう。眞鍋をフィーチャーしているマイコミジャーナルの芸能面にわざわざリンクしたことに他意は無い。たぶん。「ジル・サンダーとのツーショットならいいが眞鍋かをりとなら断る」などと言わない柳井氏の男気がステキだ。

このジーユー強化という経営判断には否定的な意見も出ている。「カジュアル衣料のさらなる低価格化が進み、ユニクロ本体に悪影響が出る」とか、「カニバリを起こす」つまりユニクロの需要を食ってしまうといった見方だ。しかし、これは違うだろう。

ファーストリテイリングはGAPがすでに成功させた「自社ブランドによる棲み分け」を再現しようとしているだけだからだ。GAPは主力業態であるGAPの下にオールドネイビーを位置づけることで安物のイメージから脱した。それを意識していることは柳井氏の「ユニクロのジーンズは国産の生地を使用するなど最高品質。一方、ジーユーの生地は中国産。(価格に十分見合う)そこそこの品質。ユニクロとの棲み分けは十分可能」という発言からも見てとれる。ユニクロのブランド価値を上げるためにこそ、セカンドというよりはロウワーブランドが必要なわけだ。また、すでにトレンドを主導する立場になってしまったユニクロは、しまむらやジーンズメイトといったカジュアル衣料チェーン、イオンやイトーヨーカ堂といったGMSに価格競争を挑まれる立場でもある。ある程度の売り上げは否応なしにそちらに取られてしまうのだから、だったら自ら取りに行ってしまえというのは正しい戦略だろう。

さらにもうひとつ、口に出すわけにはいかないが重要な狙いもあるはずだ。それは「ユニクロですら高くて手が出ない層」がこれから間違いなく増えるということ。しかも、この市場は思いがけないほど大きくなる可能性がある。ここをしっかり押さえなければ「いつでも、どこでも、だれでも着られる、ファッション性のある高品質なベイシックカジュアルを市場最低価格で継続的に提供する」という企業理念も実現できない。

ユニクロのブランドポジションを上げること、数少ない右肩上がりの市場を押さえることの一石二鳥の政策である。ここにGAPにおけるアッパー業態であるバナナリパブリックにあたるブランドを買収すれば、柳井氏念願の売上高一兆円が見えてくるわけだ。


これらの水際立ったブランディングにより、ユニクロもずいぶんイメージが変わった。私はしばしば「ユニクラー」を名乗ってきたが、今となってはちょっと使いづらい。衣・食・住の三つは人間生活が存在する限り必要で、だからファッション産業にはほかの二業種同様に興味がある。しかし自分のこととしてはファッションへの興味は薄い。つまり「いや、おれはユニクラーだからさー」と言うときには自嘲の意味合いがあったのだ。しかし最近、特に自虐や批判といった文脈でなしに、単に「ユニクロ製品愛用者」という意味で使われている記事を見る。こんなに短期間でニュアンスが変化した言葉も珍しいと思うほどだ。もうユニクラーは名乗れない。これからはジユラー(ラー?)を名乗りたいと思う。買ったことないけど。


それにしても、ユニクロは遠くまできたものだ……




ブランドを意識するなら、一刻も早く削除依頼を出すことを勧めたい。
posted by kaoruww at 15:58| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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