吉野家HD、8月中間最終赤字に 3期ぶり、京樽は和食店撤退(日経)
吉野家HDの中間期の最終赤字転落は3期ぶり。主力の牛丼チェーン事業は「やや計画を下回っている」状況だが、多角化戦略の一環として買収したラーメン店チェーンの店舗などで減損損失を計上するのが響く。売上高は従来予想を45億円下回る、2%増の797億円になったもよう。これを受け週明けの本日、吉野家株が急落している。これがここ一年のチャートだが、ほぼ一直線に時価総額が半分以下になったことを示している。
当ブログではしばしば吉野家の経営に触れている。特に関連の深いエントリーを挙げてみると、2007年8月30日に、一杯180円の超低価格ラーメン店を展開したあげくに潰れた「びっくりラーメン」を子会社化したことを受け、
今から幸楽苑や日高屋を追おうというのか。吉野家の多角化の下手さは外食業界で知らぬ者がないが、ここにまた一つ失敗例が増えることとなった。合掌。とか書いている。結局吉野家の経営を端的に言うと、2007年12月12日にステーキチェーンの旧フォルクス買収にからめて書いた、
牛丼市場の拡大が見込めず多角化を急ぐ吉野家は、負債を含めて百数十億円を、業績不振のステーキチェーンに投資するという。吉野家はかつてのエクセレントカンパニーから、単に図体のでかい外食グループになりつつある。株主も頭が痛かろう。ということに尽きる。
非常に利益率の高い牛丼という商品があるために、今ひとつ他の業態に力の入らなかった吉野家が、BSE騒動により牛丼単品経営を改め、本格的に多角化に乗り出した。しかし外食グループの経営という仕事は、単品をどれだけ効率的に売るかという業務とは根本的に別のものだ。今月8日までやっている松屋の80円引きセールに対抗して、8日から同じく80円引きしますとか、なにか違うのではないだろうか。牛丼屋のふりをして事実上定食屋である松屋と違い、吉野家の主力は今でも牛丼である。基幹商品を値下げするのは麻薬のようなもので、セールが終わった後の反動がキツい。こんなことは言われるまでもなくわかっているはずだが、ほかに打つ手が思いつかないところが問題なのだ。
アルバイトからの叩き上げ、ある意味カリスマ経営者の安部社長は、単品時代には大いに業績を伸ばしたし、立派な業績を残されたと思う。しかし失礼ながら、BSE以前と以後で「単品から多角化へ」と経営方針をまったく変えたのだから、それに対応した経営者が必要なのではないか。現在の吉野家の場当たり的な施策を見ると、そう考えざるを得ないのだ。