2008年09月08日

本日のお勧め記事

今日付の読売新聞朝刊1面と2面の「地球を読む」に、国立がんセンター名誉総長の垣添忠生氏が、たばこについての提言を書いている。リンクしようと思ったが、どうもWebには載せていないみたいだ。

功なり名を遂げた人というのは、現在の環境で成功したわけだから基本的に現状追認型になることが多いように思う。まして権力のありように異議を申し立てるなど、一般論としての政治家・官僚批判という、もはやどこからも文句が出ないことしかしないのが普通だ。

ところがこの人、国家がたばこという強烈な薬物を利用して自国民を中毒にしながら搾取してきた歴史を、抑えた筆致ながらはっきり批判している。アメリカ合衆国がたばこ中毒者を政策的に減らしたことにより、アメリカのたばこ会社は外国政府にたばこの輸入を認めるように迫ったのだが、日本政府はそれを唯々諾々と認めてしまったことも書いている。そして、これまでは個人の嗜好や文化として認められてきた、という歴史的事実を踏まえつつ、その上で国家が自国民をこういう形で搾取することが許容される時代ではなくなったと。今後についても、いますぐ禁止はできないが最終的にはたばこ事業法を廃止すべきというかなり踏み込んだ話をしている。

いまだ男性の40%、女性の10%、全人口の25%を占める中毒者からの反発が必至であるにもかかわらずこうした提言をするのは、がんになって痛みにのた打ち回りながら心ならずも死んでいった多くの患者を診てきたからだろう。しかもそれはたかだか国家財政の足しにするために政策的に行われてきたことだ、という怒りもあるはずだ。

たばこ中毒者の敵は嫌煙者などではなく、自国民を傷つけることを恥じず、搾取することをやめない国家である、ということをきちんと書いている。まったく同意見だ。たばこを吸う人も吸わない人もぜひ読むことをお勧めする次第である。


<関連>2008年7月29日 後藤新平の阿片政策からタバコの未来を読む
posted by kaoruww at 17:13| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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