今店頭にある週刊ダイヤモンドの巻頭に新しい情報があった。ここは2年前にすかいらーくのMBOのデタラメさをスクープしたところで、妙にすかいらーく情報に強い雑誌である。記事によると、横川家が持ち株を野村に売り飛ばしたことにより、みずほ銀行から借りた金は返済されたといわれていた(スクープ記事にもそうあった)のだが、実はまだかなり借金が残っているのだという。なるほど。私は「すかいらーく、その転落の軌跡」で「うまく株を売りつけて借金消してもらったんだから、とっとと辞めればいいのだが」と書いたが、その前提となる情報が違っていたわけだ。
すかいらーくは昨年末まで、横川家の資産管理会社であるSHCを通じて食材を仕入れていた。わざわざこの会社を通して仕入れなければならない合理的な理由はない。食材を仕入れ、マージンを上乗せしてすかいらーくに売る。その分すかいらーくの仕入れ値は高くなる。典型的なトンネル会社だ。横川家はこんな特別背任を疑われるようなやり方で、すかいらーくからカネを抜いていたわけだ。
しかしこんな異常なことは横川家が経営トップにいなければできない。すかいらーくから追い出されたらもうこんなうまい汁は吸えない。借金の返済もできない。だからサントリーに無理な申し入れまでして、社長にとどまることに固執したわけだ。この一連の騒動での、横川家の権力維持への異常な執着ぶりの理由がようやくわかった。
さて、それをふまえてこちらの記事を読んでいただきたい。現在発売中の日経ビジネスに出ている記事がネットで公開された。
すかいらーく前社長、MBOから解任までの舞台裏を激白(NBオンライン)
今回の動きが表面化して以来、公の場から姿を消していた横川氏が日経ビジネスの独占インタビューに応じ、電撃解任までの2年間を語った。というもの。これまでの経緯を知っている者からすると、噴飯ものの内容である。読んでいてあんまり腹が立ったから前言を撤回し、またすかいらーくのことを書くことになってしまった。
創業者の1人としてMBOのアイデアを出したのは僕です。2006年に発表したのも僕。でも、計画自体は(着任前の)伊東(康孝・元社長)体制時に作っているから、絡んでいない。まるで死人に口なしといった態度だ。創業家が話を進めずにどうやってこんな計画が実現するというのだ。「社員を信用したからです。でも、確認しなかった僕が悪い」などととってつけたように言いはするが、実際には伊東氏へ罪をなすりつけている。伊東氏は生きているのだから、だまって濡れ衣なんか着ずに真実を話していただきたい。話さなくても誰が何をしたかはすでに白日の下にさらされているけれども。
1ページ目の写真のキャプションにこうある。
横川氏に現場の疲弊を問うと「その話はやめよう。つらい」とつぶやいたつらいのだという。そうか。Wikipediaから引用する。
2007年10月、埼玉県加須市の元店長が月200時間超のサービス残業が原因で死亡した。このことに対し、労働基準監督署は2008年7月に労災を認定していたことがわかった。同社では2004年にも当時の店長が過労死したにも関わらず、業務が改善していなかったことになる。04年に過労死が発生したにもかかわらず、06年のMBO実行後にまた過労死が起きた。04年のケースでは、すさまじいいやがらせを受けながら亡くなったことがわかっている。
「すかいらーく」パワハラの張本人が謝罪(労働相談センター・スタッフ日記)
なによりもまずこの事件について、現場で働く人のことについて話すべきではないのか。カネを掠め取ることより、経営の主導権を誰が持つとかよりも先にだ。
人がいるじゃないですか。人を無視してこの商売は成り立ちません。などとこのインタビューできれいごとを言ってるわけだ。なのに人のことについて質問をされたら「その話はやめよう」ってどういうことだ。「つらい」とか言っておけば済むのか。
インタビューの終わりにはこんなことが書いてある。
すかいらーくに戻ってからこんな声になっちゃって。今は歌も歌えない。「お気の毒に」とでも言ってもらいたいのか?社内で怒鳴り散らしてたのがそんなに偉いのか?歌がどうしたって?従業員が2人も死んでるんだろうが。自分たちが汚いやり方でカネを抜き続けてきた会社で。今この瞬間もロクに残業代も出ないのに、ボロボロになって働いてる人たちがいるんだろうが。
かすれ声の横川氏はインタビュー中、ずっと、のど飴を口にしていた。
人間はどこまで腐ることができるのだろうか。私にはわからない。