名古屋地盤のフルーツパーラー・レモンが「諸般の事情により」東京から撤退。高島屋東京店は今日11日まで、高島屋新宿店は今月30日まで。http://t.co/x4oktHUX サイトで発表したのが今月6日。「急なお知らせとなりましたことをお詫びします」ってほんとに急すぎる!
— kaoruww (@kaoruww) 2012年9月11日
高島屋新宿店の大リニューアルを機に直接通路に面するイートイン形式になり、しかも6席しかなくなってしまった。簡易スタンドみたいなもので、落ち着いてフルーツを楽しめる環境ではない。突然の撤退も残念だけど、妙な形での運営になっていたのも残念、というか不可解。
— kaoruww (@kaoruww) 2012年9月11日
高島屋新宿店地下にあったフルーツパーラー・レモンが突然撤退したのは2012年のこと。新宿店だけでなく、東京にあった2店舗を閉店し、本拠地・名古屋の3店舗だけを残すと伝えられた。
レモンを経営していたのは(株)カタオカインターナショナルフルーツ(Webアーカイブ)。代表の片岡隆春氏は、テレビで『山本益博が「果物の師匠」と仰ぐ』と紹介されたフルーツ界の有名人。服部調理師専門学校のサイトには特別講師として今でも掲載されている。
農林水産省のサイトには「果物の楽しみ方」(PDF)(HTML)という片岡氏の講演録があり、美味しい果物の選び方や切り方を話していて面白い。宮内庁にりんごジュースを献上したら紀子様が気に入られ、招待を受け作り方をレクチャーしたエピソードや、「本物を売る」ことが世間になかなか受け入れてもらえない難しさを語っている。
ふと、「あれからレモンは名古屋で繁盛しているのだろうか」と気になり検索したところ、意外な事実が。
倒産情報:(株)カタオカインターナショナルフルーツ(愛知)(データマックス)
2016年8月23日事業停止。負債総額3億円。他のサイトには「昭和56年8月設立のフルーツパーラー経営業者。百貨店内などでフルーツジュースやフルーツゼリーなどを販売し、各地に店舗展開していた。しかし、長期のデフレ経済と昨今の厳しい消費不況に売上高は減少、不採算店の閉鎖など行ってきたが、業績の改善には及ばず今回の事態に至った」とある。
調べていくと、16年10月4日に同社は名古屋地裁より破産手続開始の決定を受け、17年7月19日には片岡氏が破産の末免責を受けていた。
あの美しく、おいしいジュースやデザートは失われてしまいもう食べることはできないのか…
東京からの全面撤退もあまりに唐突だった。たしかに少々値は張ったかもしれない。今も食べログに残る新宿店のメニューの一部。
しかし実際食べてみれば、プロがベストのタイミングで提供するフルーツでこの味なら決して高くないと思えた。フルーツとはたしかに不要不急の、余裕がなければ後回しにされてしまうものかもしれない。長く続いたデフレ環境では、最高のフルーツを出すというコンセプトの店は、東京では高島屋、名古屋では松坂屋という客単価の高いデパートですら厳しかったのだろう。いや、デパートという高いマージンを取られる場所に出店していたことも余計に苦しくなった理由の一つだろうか。
そういえば1846年(弘化3年)創業の老舗で、千疋屋と並ぶ高級果物店の万惣も店じまいしてしまった。
2012年4月16日 池波正太郎が語る万惣
ここは東日本大震災による建築規制の変更が閉店の直接の理由ではあるが、その影響があるのは神田須田町の本店だけで、銀座松坂屋や新丸ビルの支店には関係がなかった。それでもすべての店舗を閉めてしまったのは、高級な果物を商うにはあまりに厳しい環境だったということだろう。
残念なことだなあ、と嘆いていたところまた思いがけない情報が。
丸栄フルーツパーラー”レモン”は"檸檬屋"として再オープンした模様(おいしいなごや)
レモン閉店後の16年9月から片岡氏の息子が、丸栄百貨店の店舗を引き継いだという。仕入れ先、パーラーのレシピ、店構え、店員もそのまま。えーっと会社は破産したわけで取引先とは大丈夫なのと思ったが、話がついたのでしょう。公式サイトを探してみたけど見当たらない。ともかく店としては続いてるようだし、よかったよかった。
と思ったらさらに、
名古屋の老舗百貨店閉店へ=「丸栄」、18年6月末(時事)
名古屋市にある老舗百貨店、丸栄は18日、2018年6月末に閉店すると発表した。建物の老朽化が進んだ上、消費者の百貨店離れで業績改善は難しいと判断した。外商など一部を除き、古くから地元で親しまれた大手百貨店の一角が消えることになる。
1615年に前身となる呉服店が創業。近年は主力の婦人服が苦戦して売り上げが低迷し、医薬品会社の興和(名古屋市)の傘下で立て直しを図っていた。興和は周辺ビルも含めて最大約2000億円を投じて跡地を再開発し、27年をめどに新たな商業施設の開業を目指す。
記者会見した丸栄の浜島吉充社長は、「テナント化を進めてきたが、業績改善のめどが立たなかった」と説明。興和の山下孝治副社長は、丸栄の屋号について「個人的に社名は残したいが、(再開発の)施設に残ることはないだろう」との見方を示した。(2017/12/18-17:59)
どうやら6月には檸檬屋も否応なしに閉店ということらしい。なんだかたいへん。まだ紆余曲折ありそうだが、なんとか生き残ってほしいものである。
<追記>丸栄閉店後の7月15日、栄から大須に場所を移し路面店として再開した模様。こじんまりとした店のようだ。長く続くことを祈る。