2012年10月21日

コロワイドがレックス・ホールディングスをDESにより子会社化

12年9月7日、牛角を展開するレックス・ホールディングスの株式66.6%をコロワイドが保有し、10月1日付けでレックスを子会社化するという発表があった。これまでの大株主アドバンテッジパートナーズから株を買収するという方法ではなく、デット・エクイティ・スワップによるものという。外食企業の合従連衡は珍しくないが、DESを使うのはちょっと珍しい。変わったことをするなと思ったが、2番目の社長インタビュー記事の最後の部分を読んで納得した。

ネットの記事はしばらくすると消えることが多い。あとで検索する時用に、遅ればせながら記録しておく。コメントは少しだけ。

<その1>
「甘太郎」が「牛角」買収へ コロワイド、外食界4位に(朝日 9月7日)
 居酒屋チェーン「甘太郎」などを展開する外食大手のコロワイド(本社・横浜市、東証1部上場)は7日、焼き肉チェーン「牛角」などを運営するレックス・ホールディングスを子会社にすると発表した。コロワイドがレックスの株式66.6%を10月1日付で取得する。
 レックスが抱える借金のうち137億円分の債権を、コロワイドが金融機関から買い取り、レックス株に換える形で取得する。買収でコロワイドの売り上げ規模は約1600億円になり、外食業では「すき家」のゼンショーホールディングス、日本マクドナルドホールディングス、すかいらーくグループに次ぐ存在になる予定。
 レックスは1990年代後半に始めた焼き肉チェーンの成功をばねに事業分野を広げたが、業績が悪化。創業者の西山知義氏らが2007年に自社株買収(MBO)を実施して上場を廃止してからは、09年にコンビニエンスストア「エーエム・ピーエム」、11年にスーパー「成城石井」を売却するなどし、再建を進めてきた。
 コロワイドの資本参加で、11年12月期に141億円あったレックスの債務超過は解消の予定。西山氏が今後も「牛角」などの経営を担うかは「協議中」(レックス)という。
 コロワイドは積極的な企業買収で規模を広げ、「甘太郎」や回転ずし「にぎりの徳兵衛」など計925店を展開する。レックスの「牛角」や居酒屋「土間土間」など、全国の1228店を手に入れれば、食材の調達力がさらに上がり、競争力も強まると判断した。

<その2>
「牛角」買収のコロワイド社長に真意を直撃――「外食の“ユニクロ”を目指す」(東洋経済オンライン 9月18日)

居酒屋「甘太郎」「北海道」、レストラン「ステーキ宮」などを展開するコロワイドは、焼き肉チェーン「牛角」を展開するレックス・ホールディングスの株式66.6%を取得し、10月1日付で子会社化すると発表した。レックスの経営権は投資ファンドのアドバンテッジパートナーズからコロワイドに移る。

 居酒屋を主軸とするコロワイドが焼き肉チェーンを買収する理由は何か。コロワイドの野尻公平社長が東洋経済のインタビューに答えた。

――レックスを買収した目的は何か。

 今まで、外食産業は店舗を造って、その売り上げから利益を得るという構造だった。しかし市場の縮小傾向は続いており、店舗の売上高を伸ばすことは難しい。売上高が落ちても成長するためには川上へ進まなければならない。アパレル「ユニクロ」のように製造小売業は外食でも1つの勝ちパターンになっている。

 そのためにコロワイドはバンノウ水産といったマグロ卸会社を買収したり、昨年11月に神奈川県・横須賀で食材調理・加工工場を竣工したりするなど、マーチャンダイジング(MD=食材の仕入れ、物流、加工、調理、商品開発といった一連の流れ)の機能を向上させてきた。

 MD機能を発揮するためには、こうした工場への設備投資以外にも、最低1000億円の売上高か、1000店舗の規模が必要だ。レックスの買収により直営・FC合わせて1200店の販売先が加わり、レックスとコロワイドの合計で2150店規模になる。レックス傘下の物流会社コスト・イズには食材加工・調理工場はないが、コロワイドのMD機能を持ち込むことで今2013年3月期から20億〜30億円のシナジーが見込める。こうした販売先の確保とMD機能の強化とが、資本参加をした最大の理由だ。

 もう1つの理由は業態の魅力だ。コロワイドとレックスの有力なブランドを不振店対策として相互に活用する。コロワイドは今まで多業態戦略でやってきた。といっても現在の42業態は多すぎるので中期的には10業態に集約していく。

 レックスは、日本最大の焼き肉チェーン「牛角」という強力なブランドを持つ。昨年、焼き肉業界はユッケ食中毒や放射能など風評被害の影響を受け、赤字に転落した企業も多い。その中でレックスの外食事業は25.9億円の営業利益(11年12月期)を確保した。これこそがブランド力の強さの表れだ。レックスは「牛角」のほかにも、「土間土間」「温野菜」「かまどか」という4ブランドを展開している。特に「土間土間」は居酒屋のブランドイメージ調査でいつも女性からの高い支持を得ており、魅力的な業態だ。

――レックスは11年12月期決算で141億円の債務超過。売上高も06年12月期の1618億円から、11年12月期は半分以下の746億円まで縮小している。

 レックスを連結で見ると巨額の債務超過だが、外食事業はしっかり利益を稼いでいる。事業会社のレインズインターナショナルや物流のコスト・イズは利益率が高いピカピカの会社だ。簡単に言うと財務内容を改善すればレックスグループは優良企業になれる。

 レックスの問題点は財務内容が落ち込んでいただけ。理由もはっきりしていて、外食事業の不振から来ているのではない。MBO(経営陣による買収)により毎期20億円ののれんを計上したことに加え、メザニンローン(融資と出資の中間の方法を採る融資方法)が残っており、多額の金利負担もあった。こうしたMBOの弊害に加え、コンビニ「am/pm」の売却損も財務上の重しとなっていた。

 「am/pm」以外にもスーパー「成城石井」を抱え、こうした外食以外の事業を整理しないと資本政策はできなかった。09年にコンビニ、11年にスーパーを売却し、最後に残った外食産業を自主独立で行くのか、新たな親会社を探すのかということになった。

――今回の買収のスキームは?

 ファンドが持ち株を売っていないため買収ではない。コロワイドがレックスに資本参加して、子会社化する。今回の話は今年2月末から動き出した。特にレックスには株主や外資系の債権者などさまざまなステークホルダーがいて、状況は複雑だった。

 投じる総額は137億円という理解でよい。金融機関からレックス向けの貸付債権をディスカウント価格(137億円)で取得する。いくらの債権を買ったかは、金融機関のプライドもあるので言えない。債権をディスカウント価格で買ってきて、デット・エクイティ・スワップ(DES)をする。債権免除益で債務超過をバーンと解消、資本を現物出資で入れるので百数十億円の純資産ができる。

 レックスはDESや債務免除益のおかげで、子会社化後のバランスシートは純資産「約150億円」、有利子負債「約180億円」という優良会社になる。メザニンローンである残り180億円の有利子負債も、投資銀行から商業銀行にリフィナンスすることで、大幅に金利を圧縮できる。こうした財務改善を進めることで、前期まで年間70億円以上あった金利負担を、来期以降は、同5億円程度に縮小する。

 開示情報を見ればわかるように、レックスは逆風下の11年12月期、外食事業の営業利益が25.9億円。そこから金利を5億円払っても十分、利益は出る。さらにMD機能を共通化することで20億〜30億円のシナジーも見込める。EBITDA(利払い前・償却前の税引前利益)で見れば、外食事業は53億円(11年12月期)と十分に利益は出ている。

 既存のアドバンテッジや、西山知義・レインズインターナショナル会長(レックス創業者)の持ち分は、彼らが決めることだ。売却の意向があれば相談に乗る。それよりもまずはコロワイドとレックスが組んで企業価値を上げることが大事だ。そうでなければ当社のような事業会社に話を持ってこず、ファンドからファンドへ売られるだけだろう。コロワイドがいちばん、レックスにとってリアルな提案を行えたということだ。

――西山会長の今後はどうなる。

 個人のことなので、われわれがとやかく言うことではない。西山氏とは債権譲渡の契約が決まるまで、どうやったら両者でシナジーを出せるのか、ずっと一緒に議論してきた。今後については西山氏には本人の考えがあるだろう。10月1日の子会社化までの残された時間で話をする。われわれは彼が言うことを理解するつもりでいる

――コロワイドは直営店主義、レインズはFC文化中心で社風が違う。うまくやっていけるのか。

 何も自動車メーカーや製鉄所を買うわけではない。同じ外食企業だ。お互いにおいしいものを出そう、お客様に喜んでいただこう、としか考えていない。すぐなじむだろう。

 確かにコロワイドにはFC展開のノウハウはないが、自社にないノウハウを取り込むのは当たり前の戦略だ。社風の克服はわれわれがいちばん得意としている。コロワイド会長の蔵人金男は一体感を作る天才。今まで12社を買収してきて、ここまで来た。それがあるから、絶対的な自信を持って買収に取り組むことができる。この“一体感を作る”ということは私にはとてもまねできない。

――今後の見通しは。

 まずシナジーを出すことを最初にやる。既存店の不振は外的要因以外にも店舗の老朽化が進んでいることもあるから、手を入れていかなければしょうがない。われわれが資金を出して積極的に既存店をリニューアルする。

 外食産業としてお客様に喜んでもらいたいという理念がある。顧客満足はわれわれの成長につながる。もう二度とレックスは外食以外のことはやらない。稼いだキャッシュフローは店舗に再投資していく。お互い成長拡大できるように力を合わせてやっていく。これはレックスもコロワイドも、直営店、FCも変わりない。

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のじり・こうへい
 1962年生まれ。国学院大学中退。88年岡三証券入社。93年コロワイドに入社。
取締役(97年)、代表取締役専務(2009年)を経て、12年4月から現職。

経歴によると26歳で岡三証券入社、5年後の31歳でコロワイド入社、35歳で取締役ということになる。金融業界出身という立場で、これまで多くの買収案件に関わってきたのだろう。

<その3>
「牛角」創業者・西山氏が経営から退く(朝日 10月1日)
 焼き肉チェーン「牛角」を創業した西山知義氏(46)が1日、同店などを運営するレインズインターナショナルの社長職と、親会社レックス・ホールディングスの会長職を辞任し、経営から退いた。レックスが1日付で、居酒屋チェーン「甘太郎」を展開するコロワイドの子会社になったのを機に、経営陣を刷新するため。今後は「顧問」として店舗指導に携わる方針だという。後任のレインズ社長には、同社の居酒屋チェーン「土間土間」の開業に携わった松宮秀丈専務(46)が昇格した。

 西山氏は1996年、牛角の前身の焼き肉屋を創業し、起業家として注目された。その後業績が悪化し、上場廃止などで再建を進めたが、レックスは約140億円の債務超過に陥っていた。

少数株主の立場で何ができるでもない。顧問という体でお飾りにし、そのうち売却を申し出てくるのを急かさずに待つという熟柿戦術なのだろう。
インタビューでも危惧されているが、直営主義で925店舗のチェーンにフランチャイズ主体の1228店が加わるのだから、コロワイドにとって創業以来の大変化ということになる。居酒屋業界縮小という流れの中で、さらなる規模拡大によりスケールメリットを追求する戦略が功を奏すか。
posted by kaoruww at 19:02| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする